ピーコの葬式






「本当においしそうな鳥だねえ」
 皺の流れに埋もれた二つの目が、籠の中のピーコを見つめた。
 祖母はその頃ちょっと頭がおかしくなっていて、買っているインコによくそんなことを言っていた。
 ピーコは全身が山吹色のセキセイインコで、若い雌鳥だった。まだ歳月を経ない羽は、触れば崩れるかと思うほどに柔らかそうに見えた。オレンジに色づいたくちばしは、雨露に濡れた緑葉のような光沢を放ち、中からは桃色の舌がのぞいた。時折可愛らしい高い声を上げ、籠の中の止まり木を細い足で行ったり来たりしていた。雛の頃から育てていたために人によく慣れ、手に乗せて遊ぶこともできた。僕は家に帰るとまずピーコの籠を覗き、彼女がちゃんと餌を食べていることを確認してから、「ただいま」と言った。
 今でも、そう遠くはないその頃のことをよく思い出す。母は病院に暮らし、忙しい父と顔を合わせることは滅多になく、家の中には皺だらけの祖母とピーコがいた。


「ねえ、文学の授業、ちゃんとノートとってる?」
 大学の中庭で弁当を広げていたら、背後から奈緒子が忍び寄ってきた。いきなり声をかけられたので僕はびっくりして、危うく箸を取り落としそうになった。彼女は猫のように静かに歩くのが得意で、ひっそりと人に近づき相手の心臓を冷やすという悪い癖を持っている。奈緒子は花柄のワンピースに、白いサンダルを履いていた。実際に感じる温度以上に、彼女の服装はこれから来る夏を予感させた。
「五限の松川先生の? それだったらとってるけど。というか僕は、受けてる授業全てまじめに聞いてるから」
「私だってそこそこにまじめよ。この前風邪で休んだときの分を写させてもらおうと思って。あなたのノート人気あるのよ。字は美しいと言えないまでも整然と並んでいて読みやすく、講義の細かな点についてのメモはないが、とりあえず必要最低限のことはおさえてあるって」
「ふうん」
 僕は弁当の蓋をあけ、温かな芝生の上へ置いた。初夏の太陽は、まだ残酷な暑さをもたらしていない。包みこむような陽光はあちらこちらの空気にきらめいて、キャンパスを歩く学生や彼らの他愛もないおしゃべりを、いやに牧歌的なものにしていた。午後に向かう日の静かな揺曳は、地上の煩雑さを全て飲み込んでいた。何となくぼやけた光景が、僕の目の空虚をぬるく潤していったが、それは気のせいかもしれなかった。
他人から見れば、僕もまたそういう牧歌的な風景を構成する一人に見えるのだろうか。僕の身に何か悲劇的なことが起きて、誰にも見えない頭の底で懊悩たる物思いに沈んでいたとしても、こうして優しい日差しに温められた芝生に腰をおろし、弁当のふたを開けている限り、やっぱり僕はこの気抜けした風景の一員であり続けるだろうか。きっとそう見えるのだろう。それで、ノートを欲している女の子に声をかけられる。
僕が横に置いた鞄からノートを探し出す間、奈緒子は興味深そうに弁当を観察していた。彼女が弁当箱の方に首を突き出すと、肩の位置より少しだけ伸びた髪が軽やかに揺れた。
「お肉入りの野菜炒めとポテトサラダ、だし巻き卵に梅干し入りの白ご飯。これ全部自分で作るの? 毎日?」
 彼女は弁当の中身をひとつひとつ点検して、感心したように尋ねた。
「そう。毎日毎日自分で作る。一人暮らしの身の上だからね」
「すごいわねえ。私だったらコンビニで適当に買っちゃうわ」
 彼女があまりにも弁当を覗き込むので、僕は食われてしまうのではないかと心配になった。
「料理しないとさ、生きてる気がしないんだよ。毎朝起きて、食材を調理してると、今日も一日が始まって自分は生きているのかと実感する。余った食材を冷蔵庫に入れると、明日もこれを食べる自分は生きているんだろうなって信じられる」
「残りものが未来を繋いで行くのね」
「そう」
 話しているうち、僕はやっと、たくさんの教科書と茂みのようなプリントの間に潜んでいたノートを見つけた。
「はいこれ。次の授業の時に返してくれればいいから」
 奈緒子は小さなえくぼをつくって礼を言い、小走りで駆けて行った。昼休み中に図書館で調べておきたいことがあるそうだ。僕は奈緒子の後ろ姿を見送りながら、だし巻き卵を口に運んだ。


 翌週五限目の授業で、奈緒子は僕の席の後ろに座った。
「ノートありがとう。助かったわ」
 退屈ではないがさほどおもしろくもない講義が終わると、僕らは揃って教室を出た。二人とも同じ駅を使っているので、その日最後の授業が被る日は一緒に帰る。奈緒子とは学部と専攻が共通であるため同じ授業をとっていることが多く、どちらともなく話しかけて友達になった。あるいは奈緒子は僕のノートを借りることを目当てに、僕に接触を図ったのかもしれない。彼女は度々僕にノートを借りている。
「ノートに鳥みたな動物の落書きがあったけど、そんなにあの授業退屈だった? 今まで落書きなんか見たことなかったから」
 廊下の雑踏を通り抜けながら奈緒子が言った。廊下は教室から吐き出された学生で溢れていた。
「授業中ちょっと寝ちゃってさ。インコの出てくる夢を見たんだ。すぐに目は覚めたんだけど、眠気覚ましにそいつの絵を描いてた」
「なるほど。確かにインコに見えないこともなかったわね」
 僕より拳一つ分低い位置にある奈緒子の横顔が頷いた。
 僕は時たまピーコの夢を見る。その頻度はまちまちで、一か月あけることなく見ることもあれば、一年の間があくこともある。授業中のうたたねの間に見たのは初めてだ。不意を打たれたようで、目が覚めてから暫く呆然としていた。共通して言えるのは、その夢が見る度僕に強い印象を残すことだ。それは痛みではないが、えぐるように跡を引く衝撃だった。
 僕の夢の中で、ピーコはいつも鍋で煮られている。生きたまま煮えたぎる湯に入れられ、地獄のような菜箸でかき混ぜられているのだ。ピーコは懸命に湯から頭を出そうとするが、箸はインコの全ての行動を冷酷に支配し、ピーコは悲しげな瞳を僕の頭に焼きつけながら鍋の底に沈んでいく。
 何度見てもその光景に慣れることはない。目が覚めたときの僕は必ず両手を固く握りしめ、滴ることを知らない張り付くような熱い汗が、体中に纏わりついていることに気付く。
 沈みゆく太陽に急かされるように、僕らは帰り道を歩いた。闇に埋もれて行く町を歩きながら、試験のことや共通の友達の噂話をぽつぽつ話した。そうして駅の改札に辿り着くと、僕は鞄のポケットに手を突っ込んで定期を探した。他に入れてあるものに邪魔されて、定期はなかなか出てこない。毎日使う通学鞄には、自分でも気付かないうちに色々なものが溜まっていく。そろそろ鞄を整理しなければいけないかなと思う。色々なものが詰まったままでは、悲しいことに新しいものが入らない。僕の鞄の中でさえ、歴史は目まぐるしく移り変わっていくものらしい。
 駅はいつもと変わらない人の息に溢れ、ホームの明かりは自らが闇に抗う唯一の存在であるかのように、健気に灯っていた。電車は僕らが乗ってから三駅目で、力尽きるようにゆっくりと止まった。そして発車の時間がきても、動こうとしなかった。
「どうしちゃったのかしら」
 奈緒子がぼんやりと外を見ながら言った。夜の窓は暗く、光の反射で車内を映すささやかな鏡になっている。
 しばらくすると放送が入り、近くの駅で起きた人身事故のため、電車の運行が見合されていることを告げた。それから申し訳なさそうに、復旧の目途は今のところ立っていないという事実が付け加えられた。
「あと二駅分歩いてかない? 前もこんなことがあって、二時間くらい待たされたのよ。動かない電車の中で二時間待つってなかなか苦痛よ」
 奈緒子が肩にかけた鞄を持ち直しながら提案した。
 確かに今座席は一杯で、立ったままいつ動くかわからない電車に乗っているのも大変だろう。ホームの椅子も見た限りどこも空いていない。二駅先の駅で、僕たちはそれぞれ違う路線の電車に乗り換える。
「確かにそれがいいかもしれない。たまには夜の散歩も悪くないしね」
 そういうわけで僕たちは駅を出て、夏の熱気の迫る夜を歩いた。明るい駅を出ると人の流れは大分減った。夜と朝を繋ぐ頼りない街灯が小さな光を注いでいた。僕たちは、長く歩くには疲れないほどの、しかしゆっくり過ぎない速度で足を運んだ。道が広い時には並んで歩き、道が狭くなると奈緒子が僕の後ろを歩いた。前から自転車が来る時も、奈緒子はそれをよけるために僕の後ろについた。その度に僕たちの会話は途切れ、次第に会話自体が消えて行った。奈緒子とは週に一度は会うため近況報告の話題は少なく、そうやって長い時間歩いたために、話すべきことは話し尽くしてしまった。別に沈黙が気まずさに変わる仲でもなかったけど、僕は何となくそうしねかればいけない気がして口を開いた。
「ノートの落書きのインコ、あれは僕が小学生のときに飼っていたインコなんだ」
 それから僕は息切れしないようにゆっくりと、僕とピーコと祖母の話を始めた。奈緒子は僕が話すのを、町のネオンの仄明るさの中で頷き、相槌を打ちながら聞いていた。


 ピーコは僕が小学五年生の春に、我が家にやってきた。庭のチューリップが温かい日差しに誘われて、蕾をほころばせる季節だった。
 その頃父は忙しく、母は病院で入院生活を送っていた。両親は僕が淋しかろうと思って小さなインコを一匹買い与えたのだろう。僕は外で友達と活発に遊びまわるタイプの子供ではなく、家の中で本を読んでいるタイプの少年だったから、反抗期に差しかかったその年齢でも両親の気づかいを素直に喜んだ。
インコの飼育本を買ってきて熱心に何度も読み返し、ピーコの世話は全て僕が行った。少し具合の悪い時も僕はピーコに関しては怠ることなく、鳥小屋はいつもピカピカだった。 僕は学校から家に戻ると、夜遅く父が帰ってくるまでそのほとんどの時間を祖母とピーコと過ごした。僕は僕の知る誰よりおばあちゃん子だったから、そういう生活に不満はなかった。祖母はその頃少し呆けが進んでいて、ピーコに向かってよく「おいしそうな鳥だねえ」と口癖のように言っていた。
 祖母はそれでも僕のためにちゃんとご飯を作ってくれたし、僕も祖母を慕ってよく彼女と台所に並んで料理を手伝った。祖母は野菜の切り方や魚のおろし方を丁寧に教えてくれたので、僕の料理の腕は日々上達していった。
 呆けた祖母は時々変なことを呟いた。相手をしているときりがないので僕は聞き流していたが、そういう時にはきまってどこか淋しい気持ちが僕を捉えていた。隣にいる祖母が遠く離れて違う世界に行ってしまう気がした。漠然とした不安、水につけるとどんどん増える乾燥ワカメのような不安が、自分を侵食しているのを感じた。祖母は「おいしそうな鳥だねえ」と言いだす前は、頭のしっかりした頼れるおばあちゃんだったのだ。
 六年生の夏休み、僕は修学旅行で京都に二泊三日の旅行に行った。一年たって、祖母は今まで以上におかしなことを口走るようになっていた。それでも頼めるあては祖母しかいないので、僕はピーコの餌の内容と小屋掃除のやり方を大きな字でノートに書きつけ彼女に渡した。祖母はうんうんと頷き、僕の大きな荷物に「重そうだね」と言いながら送り出してくれた。
 ピーコが死んだのはその修学旅行の間だった。
 旅行を終えた夜、僕が家に帰ると祖母が言いにくそうに口を開いた。
「ピーコがね、ピーコが死んだんだよ。昨日の夜中だったかねえ。寝る前に小屋を見たらね、止まり木から落ちて動かなかったんだよ」
 祖母は何度も何度も同じ説明をして、ごめんねごめんねと僕に謝った。僕はピーコの死に驚き悲しみはしたけれど、祖母を怒ったりはしなかった。それはとても筋違いなことだとわかっていたから。
 祖母はピーコを庭に埋めたというが、その場所はわからなかった。ピーコの埋葬を終えてスコップを片づけに行ったら、もうどこに埋めたかわからなくなってしまったようだった。僕は翌朝、庭中を歩いて丹念に調べて回ったけど、それらしき形跡は見当たらなかった。ただ真夏の太陽が、僕の背中に黙々と照りつけていた。
 僕はそんなことは気にしていなっかったはずなのに、ピーコが死んだ次の日の夜、その後僕に付きまとい続けることになる例の夢を見た。祖母が繰り返し「おいしそうな鳥だねえ」と言っていたのが、自分でも気付かない心の奥底に、燻ぶるように記憶されていたのだろう。もちろんそんなことはないと理性ではわかっていたけれど、年を重ねるにつれ違う世界へ離れて行く祖母を見ていると、そんな気がしてくるのも仕様がなかった。
 僕が中学に上がる頃には、祖母の体は日に日に弱っていった。耳も遠くなった祖母は、ぼんやりと外を見たり家の壁を見ていることが多くなり、僕は祖母とのどうしようもない隔たりを感じ始めていた。
 やっぱり家族の状況は変わらずに、夜遅く父が帰ってくるまで家には祖母と僕の二人しかいなかった。ピーコが死んでしまったからは、本当に二人っきりになってしまったのだ。家の中にいると、祖母の朽ち果てて行く静かな音が、体中にしみ込んでくる気がした。僕は玄関の扉をあける度、祖母が死んでしまっているのではないかと不安だった。ちょうどピーコが死んでしまったように、ある日ひっそりその呼吸がとまってしまうのではないか。家の中にいるときは、僕はいつでもそれが怖かった。過ぎて行く時間の一分一分に削り取られていく祖母の命は、僕を憂鬱にさせた。
 本当は何かあった時のために、僕は少しでも祖母の傍にいた方が良かったのだろう。でも僕は、そういう家の中にいることに耐えられなくなった。学校が終ると友達と遊びに行ったり図書館に籠ったりして、なるべく家にいることのないようにした。
 そして時々鍋で煮られるピーコの夢を見ては、「おいしそうな鳥だねえ」と言う祖母の顔を思い出した。
 祖母は寒い冬の日に、もう二度と開くことのない瞼を閉じた。抵抗の術はなく祖母は死に吸い込まれ、彼女の八四年はこの世界から滑り落ちた。
 僕が感じたのは、悲しみというより深い安堵だった。僕はもう祖母の命が目減りするさまを見続けなくてよくなったし、喪失の不安の一切は消え去った。祖母が死んだときも、葬式のときも、墓参りのときも、僕は泣けなかった。


 話し終ってから、僕は我に返った。追憶にふけるあまり、隣に響く奈緒子の足音さえ、僕の耳からは失われていた。
「ごめん、変な話して。つい思い出したら、とまらかったんだ」
 僕は奈緒子の方を向いて謝った。奈緒子は気にするなというふうに微笑んで、軽く首を振った。
「いいわよ。それよりそこのコンビニで飲み物買ってきてもいい? あなたの分も買ってくるから待ってて」
 奈緒子は僕の承諾を聞くと、横断歩道の向こうのコンビニに小走りにで向かった。僕は夜風にあたりながら、彼女の帰りを待った。
 五分ほどすると、奈緒子は重そうな袋を抱えてもどってきた。
「何それ。一体何を買ったの」
「缶ビールを少々と線香花火。ピーコのお葬式をするの」
 奈緒子は言いながら、僕の前を歩き始めた。
「庭のどこがお墓かわからないのはかわいそうでしょ。それから余計なお世話かもしれないけど、あなたがもうピーコの変な夢を見ないように」
 僕はあっけにとられて暫く立ちすくんでいたが、奈緒子との距離がどんどんあいていくので慌てて追いかけた。
「そりゃまあ、いいけど」
 奈緒子は僕を小さな川に連れて行った。歩道の横の階段を降りると、草の茂った川岸を歩いて進んだ。夏の虫たちが鳴いていた。遠くに、短い命を惜しんで夜も鳴き続ける蝉の音が、ぼんやりと聞こえた。水の流れる気配が、その間を縫うように伝わってくる。
「いつも電車の窓から見えてる川よ。来たのは初めてだけど」 
 僕と奈緒子は草原に腰をおろし、黙ってビールを飲んだ。冷たい液体は僕の体に居場所を求めて、流れていった。 それから僕たちは線香花火をした。僕の持っていたライターで一本一本火をつけ、光の塊りが華やかに燃えて死んでいくさまを、黙って見守っていた。線香花火の弾ける独特の音が、何か過ぎてゆくものを感じさせた。
「きれいね。子供の頃よくしたわ」
「僕も」
「小さい時は静かな花火でつまらないと思ってたけど、今みると、やっぱりこれが一番きれいな気がする」
 僕らはそういう話をしながら、長い時間をかけて全ての花火を消費した。
 僕がビールの缶を袋に戻し帰り支度を始めている横で、奈緒子は地面を掘りだした。
「何してるの?」
「何って、地面を掘ってるの。終った線香花火を埋めようと思って」
 彼女は固い土を、ほっそりとした手で熱心に掘っていた。
「お葬式だから?」
「そう。お葬式だから」
 僕も奈緒子を手伝い、一緒に穴を掘った。地面は頑なまでに僕らを拒んでいたが、やがて小さなへこみのような穴ができた。僕と奈緒子は燃え尽きた花火たちをそこに並べ、慈しむように土をかけてやった。この穴に、僕の夢も、祖母の言葉も埋もれていまえばいい。地面のなかでひっそりと、跡かたもなく朽ちてくれれば。一度掘った土は、さっきとはまるで違って柔らかだった。それから暗闇の中で手ごろな大きさの石を探し、その上に置いた。僕の夢や祖母の言葉が、穴から漏れ出てしまわないように。僕は土を手でたたいたりして整えながら、何だか離れがたいものの傍にいるように、しばらくそこを動かなかった。
「行きましょう」
 奈緒子は立ちあがり、僕も続いた。立ち去り際、僕はもう一度ピーコの墓を見た。
 僕の夢や、思い出したくないことを閉じ込めるのに、あの石で充分だろうか。もっと大きくて、もっと特別な石でなければならなかったんじゃなだろうか。祖母やピーコは、もう僕を追いかけてこないんだろうか。
 前を見た。奈緒子は草原の中を確かな足取りで進んでいる。彼女との間がだいぶひらいてしまった。夜の暗さに慣れた目が彼女の後姿を捉えようとする。奈緒子の背中は時折背の高い草に隠れた。
 僕は奈緒子を見失わないように、彼女との距離が遠くならないように、蒸し暑い初夏の夜を歩いた。





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